専門家のノウハウ、試験結果、開発記録を1つのアシスタントに集約。すべての回答に出典を明示
事業部のノウハウは、外部専門家の講義とスライド、パートナーとの試験結果、技術的なフィードバック、社内の開発記録に分散していました。担当者に必要だったのは、顧客にそのまま説明できる回答です。Craft Sprintでは講義とスライドの一部を対象に、機密性を確保したアシスタントが正確な出典を添えて回答し、資料に答えがなければ回答を控えられることを実証しました。現在はAmazon Bedrockを用いて閉域のAWS環境で本番構築を進めており、試験結果・フィードバック・開発情報も同じ場所に集約します。
出典付きで一元化するノウハウの種類(専門家の理論・試験結果・パートナーからのフィードバック・開発記録)
試行での正答数(専門家が作成した検証用の質問)
- 顧客
- 国内産業機器メーカーの技術部門
- 利用者
- 事業部の担当者(試行は5名。本番では対象を拡大予定)
- 範囲
- Craft Sprintによる試作・試行・AWS上の本番設計
- 期間
- 2026年8月に試作 → 2026年8月に試行 → 本番構築
- 対象資料
- 試行:講義シリーズの一部(録画15本)とスライド資料39点。次の段階:試験結果、技術的なフィードバック、開発記録

22問の検証セットで、出典を示した回答の割合
資料の範囲外の質問のうち、推測せずに回答を控えた件数
映像・スライド・試験報告に分散した専門知識
この事業部は、バイオ医薬品メーカー向けに連続精製システムを販売しています。抗体精製、クロマトグラフィー、プロセスのスケールアップに関するノウハウの多くは、外部のバイオプロセス専門家による長期の講義シリーズに由来します。講義は映像で記録され、スライドと演習も用意されていました。同じく重要なのが、パートナーと実施した評価の結果、外部専門家からの技術的なフィードバック、事業部自身の開発記録です。これらはそれぞれ別の場所に保管されていました。
担当者に必要だったのは、顧客にそのまま説明できる回答です。汎用のAIチャットボットでは、その役に立ちませんでした。社外に出ていない資料の内容を知らず、回答の根拠を示せず、分からない部分をもっともらしい推測で補ってしまうためです。
分散したノウハウ
講義、スライド、試験結果、フィードバック、開発メモがそれぞれ別の場所にあり、録画は検索すらできない状態でした。
根拠をたどれる回答
顧客に伝える内容は、特定の講義やスライドまでさかのぼれる必要がありました。
社外秘の資料
録画とスライドは、自社の管理外に出すことも、公開モデルの学習に使わせることもできませんでした。
実際の資料で信頼性を実証し、ノウハウ全体を1か所に集約
私たちが構築したのは、専門家をデジタルで再現したものではなく、匿名のアシスタントです。索引に登録した資料だけを根拠に回答し、すべての文に出典を付け、根拠がなければ「資料に記載がありません」と答えます。録画の文字起こしと索引の作成はローカルのマシンで行います。言語モデルに送るのは短いテキストの抜粋だけで、データを学習に使わないことを定めた商用規約のもとで送信します。
Craft Sprintによる試作
- Whisperによるローカルでの文字起こし(実時間の4.6倍速)
- 用語集とスライドの内容を手がかりに、誤認識された専門用語を補正
- キーワード検索(BM25)とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド検索。コンテンツのハッシュで差分だけを取り込み
- 22問の検証セットを作成し、資料を追加するたびに再実行
試行
- 5名で試行するWebアプリ。メールアドレスでアクセスを制御
- すべての質問をログに記録し、資料の不足箇所を把握
- 規制・科学分野の許可済みドメインに限ったWeb検索モード(任意)。社内資料と公開情報は区別して表示
運用方式の選択肢
- 意思決定者向けの説明資料(汎用AIとの違い、ライブデモ、3つのホスティング方式)
- 高速・詳細の2つの回答モードで、1問あたりのコストを実測
本番設計
- AWS東京リージョンの専用アカウント。顧客の社内ネットワークからVPN経由でのみ接続
- Amazon Bedrock上のClaudeをPrivateLink経由で利用。コンテナは2つのアベイラビリティゾーンに配置
- 新しい文書・試験結果・開発記録を自動で取り込み
- 並行稼働と、試行時との品質比較を含む8–10週間の計画
分散した資料から、技術・営業の双方が頼れる1つの情報源へ
このアシスタントが返す最も重要な回答は「それは資料に記載がありません」です。決して事実を作り出さないアシスタントでなければ、顧客の前で信頼して使うことはできません。
講義ライブラリから、事業部の技術ナレッジ基盤へ
試行は、講義資料の一部を対象に1台のマシン上で行いました。本番構築では、アシスタントをAWS東京リージョンの専用アカウント上のAmazon Bedrockに移行します。インターネットから遮断し、顧客の社内ネットワークからのみ接続できる環境です。同じ入口から、試験条件を含む試験結果、パートナーからの技術的なフィードバック、社内の開発情報を追加し、技術者が1つの情報源をもとに試験の準備や顧客への回答を行えるようにします。その際も、理論と測定結果は明確に区別して扱います。
閉域環境の構築
専用アカウント、VPC、拠点間VPN、シングルサインオン、暗号化、監査ログをコードで定義します。
再構築と検証
Amazon TranscribeとBedrockの埋め込みで索引を作り直し、試行と同じ質問で回答品質を比較します。
対象資料の拡大
残りの講義、試験結果、パートナーからのフィードバック、開発記録を追加し、利用者を事業部全体に広げます。
