
毎年、多くの組織で同じことが起きています。ある部門では、システムの保守予算が使われないまま、年度末にひっそりと失効します。別の部門では、あるプラットフォームの予算が第3四半期に底をつき、担当者が新たな購買申請を起こし、承認を待ち、当初の見積もりがなぜ外れたのかを説明しなければなりません。
誰かが意図したわけではありません。保守予算を部門ごと、プロジェクトごとに設定し、それぞれを個別に管理すると、こうなるのです。
部門別の予算がうまくいかない理由
保守の仕事には、本質的に波があります。半年間落ち着いていたプラットフォームでも、ランタイムのサポート終了、新しい市場の追加、セキュリティ上の問題が起きれば、数週間分の工数が必要になります。逆に、立ち上げ時は忙しくても、その後は落ち着くプラットフォームもあります。システムごとに予算を固定するのは、どのプラットフォームも1年前の見積もりどおりの工数で済むという前提に立つことです。実際にそうなることはほとんどありません。
その結果は予想どおりです。
- 使われなかった工数は失効する。 ある場所で不要だった予算を、必要な場所に移せません。
- 不足すれば新たな承認が要る。 忙しいプラットフォームでは期中に追加申請が発生し、事業側に遅れと手間が生じます。
- 全体像が誰にも見えない。 各部門が見るのは自部門の工数だけで、たいていは月次報告の合計値です。全体の支出が適正か、ある月が忙しかった理由は何か、誰も説明できません。
報告の仕方が状況を悪化させることも少なくありません。月次のスライド資料にはチケットと工数が並びますが、事業責任者が判断に使える言葉で説明されることはほとんどありません。
個別の予算から、一つのプールへ
代わりの方法は簡単に説明できます。作業量を正直に見積もり、それを部門とプラットフォームをまたぐ一つのプールとして管理することです。
私たちはこのモデルを、日系自動車メーカーのアジア太平洋地域統括会社で運用してきました。4つのプラットフォームを一つのマネージドサービス契約でカバーしています。これを機能させたのは、次の4つのステップです。
1. ベースラインをプラットフォームごとに正直に見積もる
プール化は、見積もりをあいまいにするための手段ではありません。まず各プラットフォームのベースラインを作業項目ごとに見積もり、算出根拠を文書にしました。その合計を年間のプールとし、各部門が自部門の割り当ての算出過程を確認できるようにしました。
2. すべての工数を共通のサービス区分で記録する
すべての作業を、少数の共通区分で記録します。インシデント対応、サービスリクエスト、変更、監視、アップグレード、報告、ガバナンスです。プラットフォーム間で同じ区分を使うことで作業を比較でき、忙しかった月が障害対応によるものか、計画的な改善によるものかが明確になります。
3. 毎月、事業の言葉で報告する
プラットフォームごとのスライド資料に代えて、地域統括会社には毎月更新する一つのダッシュボードを提供しています。計画に対するプールの消化状況、各月の工数を押し上げた作業の種類、各プラットフォームの稼働状況、進行中のプロジェクトの状況を示します。あるプラットフォームが計画を超えた場合は、その理由を平易な言葉で、数字と同じ場所に記載します。
これにより、定例会議の内容も変わりました。事実が1ページにまとまっているため、報告の準備にかける時間が減り、次に何をするかを決めることに時間を使えるようになりました。
4. 余剰の使い道を事前に合意する
議論の質を変えるのは、このステップです。地域統括会社と事前に合意し、プールに余剰が出ても失効させないことにしました。余剰は新しい取り組みに再投資します。たとえば、AIを活用したツールの試作を短期間のCraft Sprintで構築するといったもので、内容は同社と一緒に選びます。
これまで最小化すべきコストだった運用予算が、次の良いアイデアの原資になります。
何が変わるか
- 年度の途中でも、必要な場所に工数を回せる。 新たな購買申請は要りません。
- 年度末の無駄がなくなる。 余剰の使い道が合意されているためです。
- 事業側から見える予算と説明が一つになる。 個別の工数表の寄せ集めではありません。
- 会議が意思決定に集中する。 報告の突き合わせに時間を取られません。
まず取り組むこと
すべての契約を一度に見直す必要はありません。現実的な第一歩は、同じチームがすでに保守している2つか3つのプラットフォームを選び、ベースラインを開示したうえで見積もり、1四半期の間まとめて報告することです。使い過ぎと使い残しのパターンは、たいてい数か月で見えてきます。それとともに、プール化すべき理由も明らかになります。
保守予算がある場所では余り、別の場所では足りなくなっているなら、状況をお聞かせください。多くの場合、短時間のワークセッションで、お客様のプラットフォームで共有プールがどのような形になるかをお示しできます。